まずは、あがり症について、知ることから、始めてみましょう。
目次
1. あがり症とは
「あがり症」(上がり症、上がり性)とは、精神障害、恐怖症のひとつで、
人前で極度に緊張しやすい、性質・体質のことです。
精神医学では、「対人恐怖症」(Taijin Kyofusho Symptoms、TKS|Symptomsは、症状の意)と、定義されており、
直訳すると、「たいじんきょうふしょう症」となります。
(※アメリカ精神医学会によって出版されている『精神障害の診断と統計マニュアル』Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders、DSMより)
実は、あがり症は、
海外では、日本における特異的な恐怖症として、取り挙げられているのです。
日本で顕著な「文化依存症候群」(Culture-Bound Syndrome、CBS、カルチャー・バウンド・シンドローム|文化結合症候群)とされ、
文化精神医学の研究対象にもされています。
もちろん、あがり症は日本に限ったことではありませんが、
少なくとも、日本にあがり症で悩んでいる方が非常に多いのは事実です。
日本文化とあがり症
第二次世界大戦中、日本の文化について調査・研究を行った、ルース・ベネディクトの著書『菊と刀』(1946年)では、
恩や義理などといった、日本文化の固有価値を提示する一方で、
日本の文化は、他者の嘲笑や避難を恐れて自らを律する「恥の文化」(shame culture)であり、極めて他律的である点を指摘しています。
- 周りの目を気にし過ぎる
- 失敗し、恥をかくことを極端に嫌う
こうした「恥の文化」が、日本であがり症が多い原因ではないかと考えられています。
2. あがり症の症状
- 落ち着きがなくなる
- 心拍数が上がる
- 過呼吸になる
- 汗が出る
- 口が渇く
- 手足が震える
- 声が震える
- 表情がこわばる
- 視線の置き場に困る
- 話そうとしても、思うように口から言葉が出ない
- どもる(吃音、きつおん)
- 顔がひきつる
- 顔が赤くなる
など
特に、
- 自意識過剰
「自分が他人にどう見られるかを考えすぎる」という、精神的症状が特徴的です。
不安に思うあまり、意識がその一点に集中し、逆に症状が悪化してしまいます。
症状が嫌で、治そうと意識すればするほど、症状が悪化して、悪循環に苦しめられることになります。
「…意識 → 症状 → 意識 → 症状…」
3. あがり症を克服する方法
世間は、こう言います。
「周りの目を気にしなければいい」「意識しなければいい」
…ですが、そう簡単にはいきません。
「周りの目を気にしてしまう」「意識してしまう」のが、あがり症だからです。
あがり症を克服することは、世間が思っている以上に、難しいのです。
深呼吸をする
あがっているときは、過呼吸であることが多いので、
深呼吸をすると、呼吸が正常になり、一時的にあがりを抑えることができると言われています。
ですが、個人差が大きく、
応急処置程度で、あまり大きな効果は期待できません。
森田療法
あがり症の克服には、その症状を受け入れてしまうこと、開き直ってしまうことが効果的です。
森田療法とは、日本の医師、森田正馬(もりた まさたけ)氏が考案したもので、
「あがり症の自分」を、肯定して受け入れ、
「あがり症でも、かまわない」という心情を得ることにより、
あがり症を克服しようとするものです。
ですが、結局は、精神論。
これだけで、あがり症が克服できるとは、思えません。
話し方を身につける
あがり症の克服には、話し方を身につけることが、非常に効果的です。
話し方を身につければ、上手に話すことができますので、恥をかくことはありませんし、何も恐れるものがないのです。
むしろ、羨望の眼差しを受けますし、社内での評価も、ぐっと高まることでしょう。
人前で話すことに自信が持てれば、あがり症とは無縁なのです。
ところが、日本の一般教育課程では、話し方を身につけるための機会がほとんどありません。
(※欧米では、小学校から大学まで、話し方の教育が必修科目に組み込まれています)
話し方の教育を受けていないのですから、人前で話すことに自信が持てないのです。
人前で話すことで失敗し、恥をかくことを恐れて、あがってしまうのです。
☆まとめ
「恥の文化」を持つ日本においては、あがり症で悩んでいる方が非常に多い
日本の一般教育課程では、話し方を身につけるための機会がほとんどない
あがり症を克服するには、①精神論だけではなく、②人前で話す実力が必要