好かれる話し方のコツは、「切り出し」にあります。
特に、持ち時間の少ない場合は、スタートの切り出しでつまずくと、話を立て直す時間は残されていません。
話し始めで、聞き手の心をしっかりつかみ、一気に引っ張っていく必要があるのです。
目次
好かれる話し方のコツ ~聞き手の心をつかむ「5つの切り出し方」~
話の上手な人は、最初のひとことで、聞き手を惹きつけます。
- 「もしも、今、大地震が起きたら、あなたはどうしますか?」
- 「宇宙人は必ずいると言ったら、あなたは信じますか?」
聞き手に「何の話だろう」と思わせて、聞く意欲をかき立てながら、グイグイと話に引き込んでいくのです。
特に、持ち時間の少ない場合は、長い話のときよりも、切り出しの10秒が重要になります。
例えば、「マラソン競技」と「短距離競走」を比較して、考えてみましょう。
同じ、陸上競技ではありますが、記録を更新するために注意すべきポイントは、異なります。
マラソンでは、「ペース配分」が勝敗を左右します。
多少、スタートが遅れても、自分のペースを守り、徐々にピッチをあげていけば、記録を更新することはできます。
ところが、短距離競走では、一にも、二にも、「スタートの切り方」ひとつで、勝負が決まってしまいます。
スタートで失敗すると、すべてが台無しになってしまうのです。
「人前での話」の場合も、まったく同じことが言えます。
長い話は、中身がよければ、多少、切り出しが平凡でも、話の展開を工夫することで、聞き手の注意を惹きつけて、感動を与えることができます。
しかし、3分程度の話では、スタートの切り出しでつまずくと、話を立て直す時間は残されていません。
話し始めで、聞き手の心をしっかりつかみ、一気に引っ張っていく必要があるのです。
切り出しのうまさが、話全体の印象を決めるわけですから、
聞き手の心をわしづかみにする、切り出し方法を、数多く、身につけておくことです。
~聞き手の心をつかむ「5つの切り出し方」~
①「話題」を告げるときに、ひとひねりする
②「質問型」で、考えさせる
③「不完全予告法」で、ドキッとさせる
④「物語風」に切り出して、イメージを広げる
⑤「視覚物」を使って、趣向をこらす
①「話題」を告げるときに、ひとひねりする
話し始めに、話題を告げるのが、話し方の基本ですが、
ありきたりの話題を述べるのではなく、聞き手の興味を惹きつけるような工夫をしましょう。
例1:「挨拶の大切さを知った」→「挨拶ひとつで100万円の注文がきた」
例2:「安全運転をしよう」→「女房子供を路頭に迷わすな」
例3:「不景気なので物を大切にしよう」→「あなたの家庭生活を豊かにする方法をお教えします」
同じ話題でも、表現の仕方によって、聞き手に与える印象は、まるで違います。
常に、「聞き手が興味をもつかどうか」という視点で、考えましょう。
②「質問型」で、考えさせる
話し始めに、話題を告げるのが、話し方の基本ですが、
- 聞き手に、受け入れ態勢をつくってもらうこと、
- 話し手自身の、言いたいことを明確にすること、
この2つの原則さえ、守っていただければ、必ずしも、話し始めに、話題を告げる必要はありません。
開口一番に、質問を投げかけて、聞き手に考えさせてから、話に入るのも、ひとつの手です。
例1:
「水道の水が出ない、電気がつかない、ガスが出ない…、あなたは、このような生活を想像したことがありますか?」
「今日は、当たり前のことに感謝の気持ちをもとう、という話をします」
(→あるものが無くなって、ありがたさがわかるのでは遅い…という話)
例2:
「毎年、およそ150万人もの人々が迎えることといったら、あなたは、何かおわかりになりますか?」
「今日は、社会人になったら責任をもとう、という話をします」
(→成人式の話)
例3:
「あなたは、並んでいるとき、横から割り込みをされて、腹が立った経験はありますか?」
「今日は、人の振り見て我が振り直せ、ということを申し上げます」
(→マナーを守ろう…という話)
聞き手は、質問の答えを探そうとして、じっくり、話に、聞き入ってくれます。
「皆さん」ではなく、「あなた」という言葉を、使うようにしましょう。
そうした方が、聞き手も、自分のこととして、考えてくれます。
そして、質問を投げかけたら、必ず、聞き手が考えるだけの「間」を置きましょう。
この「間」があってこそ、質問が生きてくるのです。
③「不完全予告法」で、ドキッとさせる
意外な言葉で、聞き手の注目を集めるのが「不完全予告法」です。
例1:
「私は、これまで三回も、警察のお世話になりました」
(→よく、話を聞いてみると、幼稚園のとき、迷子になった話)
例2:
「私は、昔、ニューハーフでした」
(→よく、話を聞いてみると、七五三のとき、晴れ着を着るのが嬉しくて、姉の晴れ着を借りて、女の子の格好で、お宮参りをした話)
例3:
「〇〇さんには、隠し子がいることを、あなたは、ご存じですか?」
(→〇〇さんは、幼稚園の保母さんで、子供たちから『お母さん』と呼ばれている話)
表現をちょっと工夫するだけで、聞き手をドキッとさせて、話に引き込むことができます。
④「物語風」に切り出して、イメージを広げる
ステージの前に立ったとき、すぐには、声を出さずに、少し、間をおいてから、「物語風」に話を切り出すと、
聞き手の興味を、一気に、喚起することができます。
例1:
「これは、雪の降る師走の繁華街での出来事です。
ある薬局に、地下足袋(じかたび)をはいた、一見、人足(にんそく)風の中年の男性がやってきました…」
例2:
「6月の、ある日曜日のことです。
梅雨の中休みでしょうか。
久しぶりの、薄日の差した昼下がりです。
街行く人たちは、初夏を楽しむかのように、散策しています…」
例3:
「西の空には、まるで水の中に赤いインクをまいたような、真っ赤に燃える夕焼けが広がり、我が家に帰る子供たちの背中を照らしています…」
「物語風」に話を切り出すと、イメージを共有できるため、聞き手が何人いても、全員の気持ちを同じ方向に向けさせることができます。
⑤「視覚物」を使って、趣向をこらす
話に入る前に、ちょっとした小道具などを使う方法です。
人は、誰でも、「自分の目で見たい…」という欲望が強いのです。
小道具を使うことで、話し手の一挙手一投足に、注目するでしょう。
聞き手にとっても、気分転換になりますので、疲れをほぐす効果もあります。
例:
「これが何だか、おわかりになりますか?
(クルミを見せる)
そうです。
これは、クルミです。
あなたは、このクルミを、素手で割ることができますか?
(少し、間をおく)
…今日は、このクルミを、簡単に割る方法を、お教えしましょう。
それは、このクルミを、土の中に埋めることです。
すると、何日もしないうちに、固いクルミの殻は、簡単に割れて、地上に芽が出てきます。
こんな固い殻でも、中から成長しようという、強い気持ちがあれば、簡単に割れるのです…」
(→あなたの被っている固い殻は、外部の人が破ることはできない。
しかし、あなたに成長しようという、強い気持ちがあれば、自分の殻は、簡単に破ることができる。
…という主旨のメッセージ)
視覚物を使った切り出しは、一瞬で、聞き手の興味を、こちらに向けることができます。
実際に、視覚物を使うときには、聞き手全員に見えるように掲げるのが、ポイントです。
なお、話し手自身が、視覚物を見ながら話すと、聞きづらいので、注意しましょう。
☆終わりに
さて、話の切り出しを工夫する方法を、いくつかご紹介いたしましたが、あなたは、どれを使いたいと思いましたか?
あなたの話を成功させるためにも、こうした方法を、積極的に取り入れて、一気に、聞き手の注目を集めましょう。
気に入った「切り出し方」をお手本にして、自分なりにアレンジしてみよう